目次

1.胃腸にやさしい完全食品

消化吸収のよい豆腐は、胃腸にもやさしい食品です。軟らかいので胃や腸での消化の負担が軽く、胃腸の弱っている人にも無理なく食べることができます。

そのうえ、豆腐は、私たちが必要とする栄養素がバランスよく含まれた完全食品に近いのですから、とくに病気の人にはうってつけの滋養食です。豆腐に少ないのは、私たちの体のエネルギー源になる糖質ですがこれはおかゆなどのコメからとり、あとの栄養を豆腐からとれば、万全といえるのではないでしょうか。

豆腐発祥の地である中国では、病人の滋養食どころか、古くから豆腐を薬として使っていたほどです。清の時代に書かれた『随息居飲食譜』という本には、下痢には豆腐を酢で炒って食べ、胃の出血には砂糖と煮て食べるなど、豆腐のさまざまな薬効がでています。

薬効となると大げさな気もしますが、漢方には「医食同源」ということばがあり、医療と食事は切っても切り離せないものとしています。それだけに、完全食品としての豆腐のよさを認めていたのでしょう。


2.豆腐発祥の地、加工品が豊富な中国
中国を中心とした東アジアは、西洋の牛乳、パン、チーズに相当する、コメと大豆を核とする食文化を共有しています。

さてその大豆食品圏の中心、そして豆腐という偉大な大豆食品を生みだしてきた中国では、どのように豆腐が食べられているのでしょうか。 中国では、さすがに豆腐の産みの親だけあって、じつに加工品が豊富にあります。凍り豆腐(中国では凍豆腐)やゆば(中国では豆腐皮)、厚揚げ(中国では豆腐泡)など、日本にもある食品はもちろん、豆腐の水分を6~7割くらい抜いてしまった豆腐干、豆腐をペースト状にしたものに肉、魚、野菜などを混ぜこんだ花色菜、豆腐をのして薄い板状にし、何層にも重ねた千張皮、沖縄の豆腐ようの元になった豆腐の発酵食品である腐乳。

中国の人にもっとも親しまれているのが豆乳(中国では豆紫)です。ほとんど毎日飲む人が多く、油で揚げた長いパンを豆乳につけて食べる朝食の風景が、よく見られます。豆腐料理もよく食べています。

北部の豆腐はひじょうに硬く、南部の豆腐は日本に似て軟らかなものが多いようです。食の粋をあまねく食卓にのせてきた中国の人たちだけに、これらのバラエティあふれる素材を用い、煮たり炒めたり揚げたり、数えられないくらいの料理を作ってきています。

朝鮮からも豆腐はやってきた?
日本の豆腐は中国からだけでなく、朝鮮からも伝わったのではないかといわれています。 日本には「おかべ」という豆腐の異名があるのですが、これは秀吉が朝鮮に出兵した際、家臣の岡部という人が、豆腐の作り方を朝鮮から学んできたからだという話があるためです。高知にも、朝鮮の人がやってきて、豆腐の作り方を教えたという話が伝わっています。

中国のお隣である朝鮮には、もちろん日本より早く豆腐が入っていますし、いまでも大切な日常食品としてよく食べられています。朝鮮の豆腐は中国と同様に、日本よりかなり硬いものです。

この豆腐を使って、コチュジャン(トウガラシみそ) という韓国料理でよく用いられる調味料を入れて、野菜や肉と一緒に煮たり焼いたりした料理が多いようです。 ところで、中国や朝鮮の豆腐と、日本の豆腐は製造法が少し違います。日本では、すりつぶした豆を煮てから豆乳をしぼりますが、中国などでは、煮ずに生のまま豆乳を作ります。日本方式は、たんぱく質がよく抽出でき、製品もよりなめらかになるのが特徴です。



3.飽きずに食べられる豆腐
「世の中は豆で四角で柔らかでまた老若に憎まれもせず」
これは、中国での豆腐の作り方を日本に伝えた、隠元という僧がつくったといわれる、豆腐を礼賛したうたです。

食べ物は人によって嗜好性がありますから、いくら栄養がどうのといっても、どうしても好き嫌いがでてしまいます。隠元のいうとおり、その点でも豆腐は嫌われることが少ない食品ではないでしょうか。あまり好きではない人もいるかもしれませんが、少なくとも大嫌いだ、まったく口にしたくないという人はめったにいないと思います。

豆腐が万人に親しみやすいのは、舌ざわりがやさしく、味が淡白であるためでしょう。軟らかい食品は、お年寄りでも幼児でも抵抗なく食べることができます。しかも淡白な味であれば、ほかの素材と味の折り合いがつけやすく、料理に幅広く使えます。濃厚な味が好みの人は、ごま油のたれで食べる、麻婆豆腐にするといったように、味を自由に調整することもできます。

だれにも嫌われることがなく、しかも調理に応用がきくだけに、朝の豆腐のみそ汁から、夜の晩酌のつまみにまで、豆腐は毎日でも飽きることなく食べられます。そのことも、食品としての大きな長所ではないでしょうか。

「食べる薬」として広まったTOFU
豆腐は東アジア大豆食品圏をこえて、アメリカやヨーロッパまで進出、いまや世界の「TO FU」になっています。

TOFUが欧米で受け入れられたのは、いうまでもなく、健康食品としてでした。とくにアメ リカは、以前から肉の食べすぎによる肥満、動脈硬化、そしてそこから発生する心臓病、脳卒中、糖尿病などの成人病から体を守るために、食生活を改善することが強く叫ばれてきました。

1970年代末には、アメリカ上院議会が、健康を守るためには日本食がよいモデルになるとリポートし、一躍アメリカで日本食ブームが巻き起こったのです。

日本食素材の中でも、味が淡白でクセがないために、欧米人にたやすく受け入れられたのが豆腐でした。豆腐を食べるのは、最初こそベジタリアンやエコロジストが中心でしたが、アメリカ人の健康熱が高まるにつれて、「食べる薬」としてTOFUは一般大衆にまで急速に波及していきました。

もちろん当初は店で食べる特殊な食べ物でしたが、アメリカ青年の書いた豆腐の紹介と料理の本「ザ・ブック・オブ・トーフ」がロングセラーになったこともあり、いまでは家庭でのごく一般的な食材となり、欧米風料理にごく自然な形で取り込まれるほど普及しています。

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