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1.豊富なカリウムが塩分の害を防ぐ

和食は体にいいと見直されてきましたが、欠点をあげると、どうしても塩分を多くとってしまいがちなことです。淡白な味のご飯には、塩辛いものがよく合いますし、しょうゆやみそなど塩分の強い調味料をよく使用するためでしょう。

塩分を多くとっていると、血圧が上がることはよく知られています。高血圧は塩分だけが原因ではありませんが、ひじょうに大きな要因であることはたしかです。大豆には、その塩分の害から体を守り、高血圧になるのを防ぐ働きがあります。塩分の害に対抗してくれるのは、大豆に豊富に含まれているカリウムの働きです。

塩というのは、化学的にいえば塩化ナトリウムという化合物ですが、このナトリウムとカリウムはともに、血管壁の物質の出入りを調整をする役目があります。しかし働きはまったく逆で、ナトリウムが水分などの物質を血管内に引き入れる役目、カリウムが血管外に出す役目を果たします。この両者がうまくバランスをとって、私たちの体の中の水分の調整をしているわけです。

ところが、カリウムの量の割にナトリウムが多くなりすぎると、水分を血管に引き込む量は多いのに、出ていく水分が少なくなります。すると血管は水ぶくれ状態となり、血管の中の圧力が高くなるために、高血圧になります。ですから、カリウムをたっぷりとっておけば、余分な水分を引き出してくれるので、血圧を正常に保つのに役立ちます。

ナトリウムが多くなると、水分を引き入れるだけでなく、自分自身も血管の細胞の中に入りこんでしまいますが、その際もカリウムが細胞から引き出し、尿として排泄させてしまうよう働いてくれるのです。

大豆には天然の血圧降下剤が含まれていた
大豆成分によるさまざまな効能の中でも、もっとも顕著に現れるのが、じつはこの血圧降下作用だといわれています。

その理由のひとつはいま述べたように大豆に豊富に含まれるカリウムの働きですが、血圧降下作用について、最近もうひとつの理由がわかってきました。

大豆のたんぱく質がプロテアーゼという消化酵素で分解された時に、「アンジオテンシン変換酵素(ACE)」という名の酵素の働きを、強く阻害する物質ができることが発見されたのです。

じつは、高血圧の治療に使われているいろいろな血圧降下剤のひとつに、ACEの働きを阻害する「ACE阻害剤」という薬があります。私たちの体内には、レニン・アンジオテンシン系という血圧を調整するシステムがあり、そのシステムの血圧上昇にかかわる働きに関与している酵素がACEなので、その働きを妨害することで、血圧を下げようとするものです。ACE阻害剤は、体にたまったナトリウムを体外に排泄する作用もあるため、血圧降下にかなり有効な薬です。

大豆のたんぱく質が分解された時にできる物質も、同様にACEの働きを妨害する作用がある わけですから、大豆には天然の血圧降下剤が含まれているといえるのです。

塩分のとりすぎは健康の大敵
人間の体は塩分(ナトリウム)をとりすぎると、排泄しきれずに血管の壁をつくっている細胞のなかによぶんのナトリウムをため込んでしまいます。すると、細胞内の塩分の濃度が高くなるのでその濃度を下げるために細胞のなかに水分が集まってきて、細胞が膨張します。

そのため、血管の壁が厚くなり、通り道が狭くなるので、血液が流れにくくなります。こうして滞った血液の流れをよくしようと、心臓は必死に圧力を上げて、体のすみずみにまで血液を送り込もうとするのです。これが高血圧が起きてくるメカニズムです。

塩分の摂取量と高血圧は明らかな相関関係が証明されました。塩分の摂取量が多いほど、血圧は高くなり、脳卒中による死亡率も高くなります。胃がんの発生率も高くなることがわかっています。

人間は塩分なしでは生きられないといいますが、アフリカのマサイ族は塩分をまったくとらない食生活をしていました。とくに塩を使わなくても、3g程度の塩分は1日にとる自然の食材のなかに含まれています。彼らの尿から検出された塩分を測定すると、ちょうどこのくらいの量でした。当然、高血圧とも動脈硬化とも無縁の健康状態でした。ただし、いまはマサイ族の食事にも塩が侵入してきており、彼らは塩分の感受性が強いだけに、今後の影響が非常に心配されます。

現在、日本人の塩分摂取量は、平均で1日男性11.4、女性9.8gです。厚生労働省では、男性9.0、女性7.5gとしていますが、WHOではさらに少ない6g以下を適量としています。私たちの国際的な調査の結果からは1日7g以下まで減らすと、脳卒中や胃がんの死亡率がほぼゼロになることが明らかになっています。

日本人がこれを実行できれば、もちろん現在の脳卒中や胃がんの死亡率が飛躍的に下がりますし、平均寿命にして3年延ばすことができます。もはや「塩分を控えめに」は、世界の常識といえます。

汁物はだしをきかせる、調味にはレモンやお酢の酸味を生かす、なによりうす味に慣れて素材の味や風味を味わえる味覚を取り戻すことが大切です。 1週間塩分控えめの味つけを続けることができれば、うす味に慣れ、味覚を変えることができるのです。


2.吸収率のよい鉄で貧血を防ぐ
貧血の原因のほとんどは鉄分不足であることはよくご存じかと思います。血液中のヘモグロビンという物質には鉄が含まれており、この鉄が酸素と軽く結びつくことで、血液は酸素を体中に運ぶことができるのです。

ですから、貧血の予防と治療には鉄分を多くとる必要がありますが、そういうとすぐにレバーやほうれんそうを思い出す人が多いでしょう。しかしこれらより大豆の鉄分のほうがむしろよい補給源になるのです。

鉄という栄養素だけを考えるならばレバーがもっとも含有量が多くしかも吸収率が高く、ひじょうによい食べ物です。ただレバーはくせのある食品ですから、好き嫌いもあり、なかなか毎日食べられるものでもありません。

一方ほうれんそうや小松菜などの野菜は、含有量が大豆よりむしろ少ないうえに、吸収率が低いのです。 実際に体内で必要としている鉄はわずか1mgですが、1日に必要な摂取量は10mgといわれるのも、鉄の吸収率の悪さを、大量に食べることでカバーしなくてはならないからです。

その点、はうれんそうの吸収率1.3%にたいし、大豆は6.9%ですから、大豆はたいへんすぐれた鉄の供給源といえます。

鉄はビタミンCと一緒にとると吸収率がアップするといわれますが、良質のたんぱく質と一緒に食べても、たいへん吸収率がよくなります。ですから、大豆の良質たんぱく質が、鉄分を効率よく体に取り入れることに役立っていることになります。

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