目次

1.納豆菌の繁殖によってビタミンなど栄養が豊富になる

納豆の機能性 納豆の栄養といえば、忘れてならないものにビタミンがあります。ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ニコチン酸、ビタミンEなどが豊富で、とりわけビタミンB2はじつに多く存在しています。ビタミンB2の欠乏症では成長停止、脱毛、皮膚炎、食欲不振、疲労、口角や唇の炎症などが知られています。納豆の多くのビタミンは納豆菌によって生合成され、それが納豆に蓄積されたものです。

納豆菌の繁殖によって、煮ただけの大豆に比べ糸引き納豆にはビタミンB2が10倍も増加しています。納豆菌が繁殖するときに生体内でビタミン類を生合成し、それを菌体外に分泌するためです。ビタミンB1は脚気、しびれや筋肉痛、心臓肥大、食欲減退、神経症などの防止、ビタミンB2は体内でアミノ酸の代謝や成長に関与し、皮膚炎を防ぎ、ニコチン酸は抗ペラグラ因子になるなどさまざまな重要なはたらきをしています。 とくに最近、糸引き納豆には、いくつかの健康的機能があることがわかってきました。

納豆から由来した納豆菌は、腸内で有毒菌の繁殖を防ぐ作用があるほか、二つの重要な保健的機能性を持つ酵素が見つかったのです。 その一つはナットウキナーゼという酵素、もう一つはアンギオテンシン変換阻害酵素という酵素で、前者は血栓を溶解するはたらきをし、血栓の主成分であるフィブリン(線維素)を溶かしてくれるのであります。すでにこの酵素は血栓溶解剤として開発され、経口投与することにより、腸管内から血中に吸収されて血栓を溶解することが証明され、経回線維素溶解治療法として実用化されているほどです。

後者のアンギオテンシン変換阻害酵素というのは、抗血圧上昇性酵素で、高い血圧に対して降下作用を持つ酵素として注目され、現在、その研究が進んでいます。今日では、納豆は総売上高でも300億円を超す産業に発展してきたのをみましても、この発酵食品がいかに美味で、そしてからだにとって健康的なもの、と国民が捉えているかの証でありましょう。

とにかく、納豆の栄養価値を体験的に知って、それを有効に利用してきたのはすでに江戸時代に遡ります。納豆売りが江戸の町を朝早くから掛け声高く売り歩き、庶民の大切な味となり、この頃より朝食には味噌汁と納豆という、大豆の二大発酵食品が一つの食事パターンとして出来上がりました。これは栄養学上、大豆の高度な利用という、海外には類例のない知恵として、外国の研究者からも賞賛されている取り合わせであります。

この糸引き納豆は、日本人の庶民の味として現在では年間約60万トン近くも生産されているのです。 なお、納豆にはビタミンK (血液凝固促進作用があるとされる)が含まれているので、むしろ納豆は血栓症を起こしやすい食べものだ、として警鐘を鳴らす人もいますが、その血栓を溶解する作用のあるナットウキナーゼの存在が証明されたり、また、血液の凝固を阻止するそのような酵素を活性化するウロキナーゼという酵素も含まれていますので、ほとんど問題はないとされてきました。また血栓症は必ずしもビタミンKだけの存在で起きるのではなく、複雑な要因が絡み合って起きるので、納豆が直接そのような症状を起こすものではないとされています。要はフルファリンのような薬を使って血栓症や心臓病を治療している人を除いては、まったく問題のない健康自然食品が納豆なのです。


2.納豆のヌメヌメ粘性物質の謎
納豆菌は煮た大豆で繁殖するとき、特有の粘性物質をつくります。この納豆菌のつくった粘性物質はじつに粘りのきめが細かく、納豆をよくかき混ぜて糸を引かせた実験では、なんと6メートルも切れずに引いたという報告もあるほどです。納豆菌がなぜこのような粘性物質をつくるのかについては、まだよくわかっていないのですが、それにしても本当にヌメヌメです。

この納豆の糸引きというのは重要なもので、糸を引かない納豆など売れませんから、納豆会社では納豆の粘度と糸引きというのを絶えずチェックしています。粘度は粘度計という特殊な計測器で計られ、その単位はポアズといい、g/cm.secで表わされます。
粘度の強い粘性物は、それ自身がこころよい触感を口に与えるので、納豆、とろろなどはいずれもその粘性をも賞味する食べものであります。

さらに納豆の場合は、糸引き度も測定します。納豆に箸を入れて引き上げると糸を引きますが、その糸引きの度合いをみるわけです。糸引き度は引き上げる速度とも関係し、糸を引くには適切な速度があって、あまりゆっくり引き上げると流れ落ちて糸状に伸びないのです。また急激に引き上げると、団体のように切れてしまいます。この境界の時間を「粘弾性体の緩和時間」といって、納豆製造の管理では大切なことだそうです。



3.納豆菌って何だ?一粒に10億個の菌
納豆菌の戸籍とプロフィール
本籍 細菌群
住所 稲藁、枯れ草、枯れ葉、各種穀物など
好物 煮豆、蒸麦など
身長 2~3ミクロン
体形 拝状(細長型)
成育適温 12~45度
特技 煮豆や蒸煮した穀物に生えてメラヌラの粘質物をつくる

納豆菌はあまりにも小さい微細な生き物で、単細胞のその大きさは2~3μ (ミクロン)ですから、とても肉眼では見えません。顕微鏡で1000倍の倍率にするとはじめて見えます。いつもは空気中をプカプカと浮遊していて、稲藁や枯れ葉のようなところを対にしているのです。

子孫のつくり方(増殖法)は三分裂法というものです。適当に栄養分を取り込んだ納豆菌は、しだいに細胞が成長し、そのうちに細胞の中央に隔壁が形成されます。次にそこから二個に分裂し、単独の細胞となってふたたび成長、この分裂を繰り返すわけであります。

この細胞成長→分裂→細胞成長→分裂といった間隔は、もの凄く速くて、数十分から数時間ごとに繰り返されるため、短時間に幾何級数的に増殖していくことになるのです。1匹が2匹、2匹が4匹、4匹が8匹、8匹が16匹、16匹が32匹……、こうして数えていってもとても間に合わない数字が爆発的に続いていくのです。

たとえば納豆一粒にいったいどれぐらいの納豆菌が繁殖したのかといいますと、な、なんと10億個もの菌がびっしりと増えているのであります。煮豆についた、ほんのいくつかの納豆菌は、こうして3日後には何千万倍、何億倍と増えているのです。

その数はどれぐらいの重量になるかといいますと、納豆1グラム中にはだいたい50億個(微生物は単細胞なので数を示すときには匹とはいわずに細胞の数を個で表す)いるのです。これを15センチメートルの厚さにして、それの一立方メートル中に存在する納豆菌体量を大ざっぱに計算してみると、じつに2~4キログラムに達しています。凄いものです。

じつは、その納豆菌というのは普遍的にいる細菌で、自然界にはもっとも多く見られる微生物なのです。私たちが生活している身の回りの空気中にも、多数の納豆菌が棲息していることはすでに述べましたが、そのほかに植物の葉や枝、樹皮などの表面上にも、樹液のような有機物が多いので、多数集まっています。また花の蜜にも納豆菌が多く、これらの菌は風によって運ばれるほか、昆虫によっても広く伝播されて数を増していきます。

ある報告によりますと、常緑植物の樹液の多い葉一平方センチメートルには、納豆菌を主体とした微生物が1000万個も生育していたといいます。私たちの直接の生活の場である室内では、空気一立方メートル当たり数百個の納豆菌がいます。




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