目次

1.大豆の評価を変えたレシチン

昔から「畑の肉」といわれてきたように、大豆には、良質のたんぱく質をはじめ、あらゆる栄養素がバランスよく含まれています。1種類の食品だけでほとんどすべての栄養をカバーできる完全食品は、大豆以外には、卵と牛乳しか見当たりません。

しかし最近になって、改めて健康食品として注目されているのは、大豆に多く含まれる「レシチン」と「サポニン」という物質についての研究が進み、その成人病予防上の効果が解明されてきたからです。

まず、レシチンは、私たちの脳や脊髄、肝臓、卵黄など、植物では大豆や酵母などの種子に多く含まれる、「リン脂質」といわれる物質の一種です。

リン脂質は、「復合脂質」と呼ばれるもののひとつで、60兆個もあるという私たちの細胞の膜も、このリン脂質がずらっと並んだ構造をしていますから、私たちの体になくてはならない物質といえます。リン脂質の一種であるレシチンは、俗称で、化学的な正式名称は「ホスファチジルコリン」という長い名前です。最初に卵黄から発見されたのでギリシャ語で卵黄を意味するレキトスからレシチンと命名されました。

レシチンのもっとも大きな特徴は、水にも油にもよく溶けるため、強力な「乳化作用」があることです。乳化というのは、肌が合わないものの代表である水と油を混ぜ合わせることです。 リン脂質にはみなその作用があるのですがレシチンはとくにその力が強いのです。

レシチンは、私たちの体の細胞膜を作る材料を提供するうえでも大切ですし、このような健康上の働きの研究も進み、たいへん重要な物質であることがわかってきました。大豆はそのレシチンが多く含まれている食品の代表ですから、注目度もひときわ高くなっています。

2.レシチンは記憶力を高め、脳の老化やボケを防ぐ

アメリカで実験が行われ、レシチンを含む食品をたっぷりとった人たちはとらなかった人たちよりも、記憶力が25パーセントも上がったといいます。

こうした実験結果からもレシチンは脳の働きを活発にしてくれることがわかり、レシチンは「脳の食べ物」といわれています。覚えなくてはならないことが山ほどあって、毎日頭を抱えている受験生は、豆腐や納豆をたくさん食べて、脳に活力を与えてみてはいかがでしょうか。脳に栄養が必要なのは、なにも受験生だけではありません。

だれでも頭がシャープになりたいと願っていますし、高齢化社会になり、多くの人が脳の老化からボケに発展することを心配しています。すでに高齢の域に達している人はもちろん、若い世代であっても、将来いかにボケないようにするかは、かなり深刻な課題です。その解決の一助を、レシチンが担ってくれそうです。

レシチンが脳の情報伝達をスムーズにする
レシチンは、私たちの脳の中で、どのような働きをしているのでしょうか。 その数60兆個といわれる神経細胞の塊です。ひとつの神経細胞は、たくさんの触手のようなものを四方八方に伸ばし、ほかの多くの神経細胞と複雑にからみ合っています。神経細胞同士が結合することで、情報が細胞から細胞へと複雑に伝達されていき、それによって高度な知的活動ができるわけです。

ひとつの細胞からもうひとつの細胞へと情報を伝達する役目をするのは、さまざまな化学物質です。神経細胞と神経細胞が接している部分には少しすき間があり、一方の細胞から伝達物質が送られていきます。それを隣接する細胞の受容体が受け取ることで、情報が伝達されるのです。

その情報伝達物質のひとつに、「アセチルコリン」があります。このアセチルコリンを作る材料を提供しているのがレシチンなのです。レシチンの正式名称は「ホスファチジルコリン」といいますが、最後の「コリン」がその材料となります。コリンは脂肪酸などとともにレシチンを構成している成分で、レシチンが腸内に入ると分解され、自由の身になったコリンが、今度はアセチルコリンへと変身していきます。 脳の情報伝達にかかわるレシチンの役目は、もうひとつあります。

神経細胞から伸びる長い触手は、鞘のようなもので被われていて、この鞘の重要な成分になっているのがレシチンです。触手の鞘は、なにも保護のためにあるのではなく、情報伝達に重要なかかわりをもっています。

情報を伝達するのは、アセチルコリンなどの化学物質だと先ほど述べましたが、これはあくまで神経細胞と神経細胞の間での情報伝達にすぎません。ひとつの神経細胞の中での情報伝達は、電気的な信号によって行われています。この信号は、時速400キロメートルというすばらしい速さで伝わっていきますがこれほどのスピードを出せるのは、触子に鞘があるためです。

電気信号は、じつは鞘の部分をすっ飛ばしてしまうのです。鞘が途切れたところだけを伝わっていくので、いちいち端から順に伝えていくより、ぐんとスピードアップすることができます。神経細胞の鞘の大切な材料であるレシチンは、すばやい情報伝達の担い手なのです。

このようにレシチンは脳の情報伝達の大切な役割を果たしているので、たっぷりレシチンを取り入れることは、頭の回転をスムーズにし、また脳の老化も防ぐことができるわけです

3.レシチンが脂質代謝を改善して成人病を予防する

レシチンが注目されたのはその強力な乳化作用が、健康上のさまざまな効果をもたらして くれることがわかってきたからです。その働きのひとつはレシチンによって、血管に付着した、脂肪の一種であるコレステロールを溶かし、動脈硬化を防ぐことです。コレステロールが血管にたまると血管の中が狭くなって血流が悪くなります。その結果、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを招くことになりますから、このような成人病を防ぐことにつながるわけです。

コレステロールは脂肪ですから、水の仲間である血液中に入ると分離してしまい、血液中をうまく流れていくことができません。そこで、血液中を運ばれる時には、LDLやHDLという運搬車に乗っているわけですが、たんぱく質は水にはなじみますが脂にはなじまず、コレステロールなどの脂肪はその反対です。

その両者が一緒の車に乗れるのは、じつは乳化作用をもつレシチンなどのリン脂質が車に同乗して、両者の仲立ちをしているからです。 乳化作用というのは、いってみれば接着剤のような役目ですから、強力な接着剤であるレシチンがもし少なければ、せっかく仲よくしていたコレステロールとたんぱく質が分離してしまい、ひとりぼっちになったコレステロールは、仲のよい脂肪の仲間とくっつこうとしてしまいます。 すなわち、血液中でコレステロールが固まってしまうわけです。

LDLやHDLは脂肪を乗せているといっても、小さい粒の形をして血液中を流れていますから、本来、血液は水のようにサラサラしています。しかしコレステロールがあちこちで固まるようになると血液は粘っこくなります。そして固まったコレステロールは血液の中を流れにくくなり血管壁に付着するようになります。それがどんどんたまっていくと、動脈硬化が起こってしまうわけです。 レシチンがたっぷりあれば反対にコレステロールをがっちりつかんで離しませんからコレステロールが固まることを防いでくれます。


血管壁のコレステロールも洗い流す
うれしいことに、すでに血管壁についてしまったコレステロールもレシチンが洗い流して くれます。 血液中の余分なコレステロールはHDLが肝臓に運び戻してくれると前にいいましたがHDLにももちろんレシチンという接着剤がお供しています。しかも比率的には、LDL車よりもHDL車のほうに、たくさんレシチンが乗っているのです。

レシチンが多い分だけ、接着力は強力ですから、血管壁にワックス状にべっとりと付着しているコレステロールを引きはがしてしまいます。そして、HDL車に乗せ、小さな粒になって肝臓に戻っていくわけです。

このようにしてレシチンはいわば血管の掃除役となってコレステロールの害から血管を守 っていることになります。 脂で汚されていないサラサラとした血液になれば、血流もなめらかになり、体が必要としている栄養分もすみやかに、しかもすみずみまで送られていきます。それが、体全体の若さや健康を保つことにもつながっていくのです。


レシチンが脂肪肝を防いでくれる
肉食中心の食生活をしているとコレステロール過多による動脈硬化だけでなく、脂肪肝になる心配もあります。 脂肪肝は、肝臓の細胞に脂肪がたまってしまう病気です。健康な人では、肝臓に含まれる脂肪の量は、せいぜい3~5%くらいですが、10%以上にもなると異常が起きたということで、脂肪肝といわれます。

脂肪肝になると、肝臓が腫れて大きくなり、当然、機能も低下します。進行すると、 肝硬変に移行して死の危険に直面することもあります。 この脂肪肝の予防にも、レチシンの役割はたいへん大きいのです。

レシチンがなぜ脂肪肝を防ぐのかは、これまで述べてきたようなレシチンの働きと同じ理由です。肝臓は、コレステロールなどの脂肪を分解し、そして再度合成して血液中に送り出しています。

その際、LDLやHDLなどの運搬車に乗せて運び出すわけですから、レシチンという仲人的な役目の物質が足りないと、脂肪をうまく血液に送り出すことができません。 その結果、いつまでも肝臓に脂肪分が残ってしまい、どんどんと細胞の中に蓄積していってしまいます。 レシチンが大幅に不足すると、肝臓の脂肪は30%にまで達することがあるそうです。

脂肪肝はお酒の飲みすぎも大きな原因になっていますから、お酒のつまみには、やはり大豆食品がぴったりなのかもしれません。豆腐や納豆に加工しても、含まれる脂肪には、大豆のレシチンがちゃんと受けつがれています。


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