1.7つの長寿の法則
長寿の法則を紹介し、食生活の改善のポイントを考えてみましょう。
まず、長寿の法則とは以下の7つです。
①大豆や大豆食品を積極的にとる。(1日イソフラボンにして50mg目標、豆腐なら3分の1丁、納豆なら1パック)
②塩分を控える。(1日6g以下が目標)
③肉は食べないほうがよいのではなく、脂肪を落として適宜とるようにする。
④緑黄色および淡色野菜や果物、海藻、きのこなどから、ビタミン、食物繊維、 カリウムなどをとる。
⑤魚介類でEPA、DHA、タウリンをとる。
⑥ごま、お茶などをとる。
⑦家族や友人とともに食事を楽しみながら食べる。
心筋梗塞など心臓病による死亡率が高い欧米では、肥満や動脈硬化はかなり深刻な問題で、その大きな要因となっているコレステロールを抑えることについては強い関心が寄せられています。
とくに、食事としてとるたんぱく質に血中のコレステロール値を低下させる働きがあることは早くから知られており、その詳細を調べるための動物実験が盛んに行われてきました。
それらの研究によって、コレステロール抑制効果に関しては、たんぱく質の種類によって違いがあること、すなわち、動物性のたんぱく質より植物性のたんぱく質のほうがその効果が高いことがだんだん明らかになってきました。そこで、近年では植物性たんぱく質の宝庫、大豆についての研究報告が世界的にも活発に行われるようになったのです。
大豆たんぱく質は悪玉のLDLコレステロールを低下させながら、善玉であるHDLコレステロールは増加させるという内容のもので、悪玉の減少、善玉の増加という両側面から、血液中の脂質のバランスを整えるという大豆たんぱく質のすぐれた効果が明らかになりました。
そもそも私たちが大豆のパワーに注目したのは、脳卒中ラットでの実験でした。遺伝的に100%脳卒中が起こるようにつくられたラットに、毎日1%の食塩水を与えると、次々に脳卒中を発病して、生後100日までに残らず死んでしまいます。
ところが、同じ濃度の食塩水を与えていても、精製した大豆のたんぱく質を含むエサを与えると、脳卒中はなかなか発病しなくなり、寿命が2倍に延びることが明らかになったのです。食塩水だけを飲ませたラットの平均寿命は81日であったのに対し、大豆たんぱく質を与えたラットの平均寿命は170日と、約2倍も長生きするという結果が得られました。
しかも、食塩水だけを与えたラットと、大豆たんぱく質を与えたラットの血管をくらべてみると、大豆たんぱく質を与えたグループのほうが、よりしなやかで弾力性に富んだ若々しい血管であることがわかりました。
「人間は血管とともに老いる」、あるいは「老化は血管から始まる」ともいわれるように、血管は加齢の影響を受けやすい部分です。血管が弾力性を失って硬くなる、さらにいろいろな成分が付着して血管のなかが狭くなる、これが動脈硬化であり、このような状態が進んで、どんどん血液の通り道が狭くなると、血液が流れにくくなったり、詰まったりして高血圧や心筋梗塞、脳卒中などを起こしやすくなるのです。
世界各地で行った調査からも、心筋梗塞の死亡率が低いところは平均寿命が長く、そのような長寿地域には、大豆をよく食べているところがあることも明らかになりました。大豆をよく食べる地域では、一様に血圧が低い、コレステロール値が低い、肥満が少ない、心臓病やそれによる死亡が少ない、という結果が得られています。
逆に、大豆を食べない地域では、死の四重奏といわれる肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病が多く、比較的短命です。
つまり、長寿の人が多い地域は大豆を食べる食文化があり、人間でも、大豆食と血管の老化=動脈硬化が関連していることが徐々に解明されてきました。それらの研究成果の一つが、大豆食を強化したヘルシーランチプロジェクトで得られた動脈硬化指数の低下です。
血管が柔軟性、弾力性に富み、若々しいということは、健康長寿につながる大切な要素といえます。では、大豆のどんな成分により血管は若さを保っているのでしょうか。
私たちが、必要な栄養素をバランスよくとるには、何をどれだけ食べればよいのか、栄養学的な見地から一般の人にもわかりやすく示した指針が食品群別の摂取量の目安です。
大豆食品は血や肉を作るたんぱく質源として、肉や魚と同じ食品群に入ります。これによると、豆や豆製品は1日80gくらいとることを目安にしています。豆腐は一丁200~300gくらいですから、3分の1から2分の一丁くらい食べれば、必要量は満たせることになります。
この程度の量ならみそ汁の具や冷や奴などで簡単にとれます。少なくともこのくらいは食べたいものです。たんぱく質は毎食平均してとると効果的だといわれますが、肉類を控えている人は、それに代わるたんぱく質源としても、応用範囲の広い豆腐をおおいに活用してください。