大豆イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと似た構造を持つ成分として知られています。
では、大豆イソフラボンとエストロゲンは何が違うのでしょうか。また、大豆食品を食べることで、どのような働きが期待されているのでしょうか。
この記事では、大豆イソフラボンの基本的な性質から、エストロゲン受容体との関係、更年期や骨との関係、大豆食品からの摂取、安全性について、現在確認されている情報をもとに整理します。
なお、この記事は病気の治療や予防を目的としたものではありません。健康に関する判断や治療については、医師や管理栄養士などの専門家に相談してください。
1.大豆イソフラボンとは?
大豆イソフラボンは、大豆に含まれる成分の一つです。
大豆には、たんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどさまざまな成分が含まれており、イソフラボンはその中に含まれる微量成分です。
大豆イソフラボンには、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインなどがあります。
食品中の大豆イソフラボンは主に配糖体として存在します。摂取した大豆イソフラボンは、腸内細菌などの働きによって糖の部分が分離し、アグリコンと呼ばれる形になって吸収されます。
大豆イソフラボンは、化学構造が女性ホルモンのエストロゲンと似ているため、エストロゲン受容体に結合することが知られています。
ただし、イソフラボンの作用はエストロゲンそのものと同じではありません。体内での作用については、食品としての摂取量や個人差なども関係します。
2.大豆イソフラボンとエストロゲンの違い
エストロゲンは、女性の生殖機能だけでなく、骨や脂質代謝などにも関係するホルモンです。
一方、大豆イソフラボンは植物に含まれる成分で、植物エストロゲンの一つとされています。
| 項目 | エストロゲン | 大豆イソフラボン |
|---|---|---|
| 種類 | 体内で作られるホルモン | 大豆に含まれる成分 |
| 構造 | 人のホルモン | エストロゲンと似た構造を持つ |
| 受容体との関係 | エストロゲン受容体に作用 | エストロゲン受容体に結合することがある |
| 作用 | 強いホルモン作用を持つ | エストロゲンとは異なる、比較的弱い作用 |
大豆イソフラボンは、エストロゲンと構造が似ていることから、エストロゲン受容体を介して作用すると考えられています。
食品安全委員会も、大豆イソフラボンについて、エストロゲン受容体に結合することで促進的あるいは競合的にさまざまな生体作用を示すと説明しています。
そのため、「イソフラボン=女性ホルモンそのもの」と考えるのは正確ではありません。
3.イソフラボンと血管・血液との関係
大豆イソフラボンについては、血管や循環器系との関係も研究されています。
血管の内側には血管内皮細胞があり、血管の働きを調節するさまざまな物質を作っています。
その一つが一酸化窒素(NO)です。
一酸化窒素は血管を拡張させる働きなどに関係しています。
大豆イソフラボンと一酸化窒素の関係については、細胞実験や動物実験などを含めて研究されています。
ただし、細胞や動物を使った研究結果が、そのまま人間が大豆食品を食べた場合の健康効果を意味するわけではありません。
そのため、「大豆イソフラボンを食べれば血液がサラサラになる」「動脈硬化を防げる」といった形で断定するのではなく、血管機能との関係が研究されている成分として理解するのが適切です。
4.更年期と大豆イソフラボンの関係
大豆イソフラボンは、更年期との関係でもよく知られています。
更年期には女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が変化し、ほてり、発汗などさまざまな症状がみられることがあります。
大豆イソフラボンはエストロゲンと構造が似ているため、更年期との関係について多くの研究が行われてきました。
一方で、「大豆を食べれば更年期障害が改善する」と一律に言えるわけではありません。
イソフラボンの働きについては研究結果が報告されていますが、効果の程度には個人差があり、食品から摂取する場合とサプリメントなどで濃縮して摂取する場合も分けて考える必要があります。
更年期の症状が強い場合や生活に支障がある場合は、食品だけで対処しようとせず、医療機関に相談することが大切です。
5.大豆イソフラボンを含む食品
大豆イソフラボンは、大豆そのものだけでなく、さまざまな大豆食品から摂取できます。
| 食品 | 大豆イソフラボンの例 |
|---|---|
| 豆腐 | 大豆イソフラボンを含む代表的な食品 |
| 納豆 | 発酵大豆食品 |
| 豆乳 | 液体として手軽に摂取できる |
| 味噌 | 調味料として利用できる |
| 油揚げ・厚揚げ | 大豆を加工した食品 |
| きな粉 | 大豆を粉末にした食品 |
食品安全委員会が紹介している調査結果では、食品によって大豆イソフラボン含有量には違いがあります。
例えば、同委員会の資料では、豆腐、納豆、豆乳などにも大豆イソフラボンが含まれることが紹介されています。
ただし、実際の含有量は原料となる大豆の品種や製造方法などによって変わるため、食品ごとの数値を一律に考えることはできません。
6.大豆イソフラボンの摂取量と安全性
大豆イソフラボンについて調べると、「1日にどのくらい摂ればいいのか」という疑問も出てきます。
ここで重要なのは、通常の大豆食品から摂取する場合と、サプリメントなどで濃縮して摂取する場合を区別することです。
食品安全委員会は、一般的な成人について、大豆イソフラボンアグリコンとしての安全な一日摂取目安量の上限値を70~75mg/日としています。
また、特定保健用食品などによって通常の食生活に上乗せして摂取する量については、30mg/日を上限とする考え方が示されています。
これは「大豆食品を70~75mg以上食べたら危険」という意味ではありません。食品安全委員会は、長い食経験のある大豆や大豆食品そのものについて、この指針の対象とはしていないと説明しています。
一方で、イソフラボンを濃縮したサプリメントや健康食品などを利用する場合は、通常の食事に加えて過剰摂取しないよう注意が必要です。
特に妊婦、妊娠の可能性がある人、乳幼児や小児については、通常の食生活に加えて大豆イソフラボンをサプリメントなどで上乗せすることについて注意が必要とされています。
7.大豆イソフラボンに期待されている働きと注意点
大豆イソフラボンは、エストロゲンと似た構造を持つことから、エストロゲン受容体との関係が研究されている成分です。
更年期、骨、血管、脂質代謝などとの関係についても研究が行われています。
しかし、研究結果をそのまま「大豆を食べれば病気を予防できる」という意味に置き換えることはできません。
特に、乳がんや前立腺がんなどの病気については、イソフラボンだけで予防できると断定するのではなく、研究段階の知見と確立された医学的事実を区別して考えることが大切です。
8.大豆イソフラボンについて知っておきたいこと
大豆イソフラボンについて、今回のポイントをまとめます。
- 大豆イソフラボンは大豆に含まれる成分の一つ
- 女性ホルモンのエストロゲンと似た構造を持つ
- エストロゲン受容体に結合して作用することが知られている
- 更年期や骨、血管などとの関係について研究されている
- 豆腐、納豆、豆乳、味噌などの大豆食品から摂取できる
- 食品とサプリメントなどの濃縮製品は分けて考える必要がある
- 大豆イソフラボンの作用を「病気を治す・予防する」と断定することはできない
大豆イソフラボンは、身近な食品である大豆に含まれているため、日常の食生活との関係を考えやすい成分です。
特定の成分だけを大量に摂取するのではなく、豆腐、納豆、豆乳、味噌などの大豆食品を含め、さまざまな食品を組み合わせたバランスのよい食生活を心がけることが大切です。
参考資料
- 食品安全委員会「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」
- 食品安全委員会「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価について」
- 厚生労働省「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針」
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