目次

1.遺伝子の働きを助け血液サラサラ効果を生む

大豆のもっとも大きなメリットは血管を若々しく保つ、動脈硬化を防ぐということでしょう。そして、それには大豆たんぱく質や食物繊維、カリウムなどもかかわっていますが、やはりひときわ注目されるのがイソフラボンの働きです。

イソフラボンは遺伝子にまで働きかけているのです。血管には内側から裏打ちしている細胞があり、内皮細胞といいますが、これが一酸化窒素(NO) という物質をつくっています。一酸化窒素は血管を広げ、さらに血のかたまり(血栓)をつくるのを防ぐ役割、つまり血流を改善する、血液がサラサラ流れるようにする役割を果たします。私たちの動物実験によって、イソフラボンはこの一酸化窒素をつくらせる遺伝子の働きを高めていることがわかったのです。

ただし、一酸化窒素は活性酸素に弱く、酸化しやすい性質があります。うまいことに、大豆そのものにも抗酸化作用のあるビタミンEが含まれていますが、それだけでなく、さらに積極的にビタミンCやE、ポリフェノールを補って酸化を防ぐことができれば、イソフラボンの効果をさらに助けることになります。つまり、大豆に加えて野菜やお茶をとる伝統的な日本の食生活は、いかにも理にかなっているのです。

このように、大豆には生活習慣病を防ぎ、血管の老化をゆるやかにして、更年期のさまざまな症状をやわらげる働きがあることがわかりました。また、がんなどの病気にも果敢に闘いを挑む頼もしい味方であることを知っていただけたことでしょう。

2.いいことづくめのイソフラボン
イソフラボンの効果をあらためて整理してみましょう。
おもな効果としては、
①血圧を低下させる。
②血液中の悪玉コレステロールを減らし、バランスを整える、肥満を予防する。
③更年期障害の症状を抑える、骨量の減少を抑えて、骨粗しょう症の発生を遅らせる
④乳がんの予防、前立腺がんの予防、ほとんどのがんの死亡率を低下させる。
などです。
血圧やコレステロールの改善は、脳卒中や心筋梗塞を防ぎますから、健康長寿には欠かせない条件です。また、3大疾病の一つであるがんも死亡率が高く深刻な病気ですから、それを予防するということは、これもまた健康長寿にかかわる大きな因子です。骨粗しょう症の予防は、寝たきりの減少に直接つながります。

こうしてみていくと、イソフラボンの健康長寿への影響力の大きさに驚くばかりです。そして、それぞれの働きは、大豆に含まれるほかの成分の働きとも重なるところが多く、互いに補い合いながら、それぞれの働きを増強する相乗効果が期待できます。 これが、サプリメントや薬とは違う、食品としての大豆の大きな長所でもあります。

3.エストロゲンの過剰な働きを抑える
イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと構造も、働きもよく似ていますが、効きめはずっとおだやかで、エストロゲンの1千分の1以下であることがわかっています。不足しているときはそれを補い、過剰に働いているときはそれを抑えるという、人間にとっては非常に都合のよい働きをしてくれます。

人間の体は非常にデリケートにできており、さまざまな物質の代謝によって生命が維持されています。この物質の代謝を支えている物質の一つがホルモンです。ホルモンは、全身の細胞の受け皿=レセプターと呼ばれる部分に働きかけて作用します。

人間が健康を維持していくには、ホルモンがバランスを保った状態で働く必要があります。ホルモンは少なすぎても、反対に過剰につくられでも人間の体に悪い影響が出てきます。エストロゲンでいうと、過剰に分泌されすぎると乳がんの原因になり、少なすぎると骨に含まれているカルシウムが流出しやすくなって、骨粗しょう症が起きやすくなることがわかっています。

つまり、大豆のイソフラボンには、そうしたエストロゲンの作用を調整する働きがあるのです。

乳がんと前立腺がんを予防する効果に注目してみましょう。前立腺がんは、いきなり転移する怖いがんで、治療には女性ホルモンのエストロゲンが用いられます。女性ホルモンが前立腺がんの細胞の増殖を防ぐと考えられており、女性ホルモンと似た働きをするエストロゲンを用いて増殖を予防するのも理にかなっているといえます。

一方、乳がんは女性ホルモンつまり、エストロゲンの働きが強すぎて起こります。それを証明するつぎのような実験があります。試験管内の実験ですが、ヒトの乳がんの細胞を試験管のなかに入れておき、そこにエストロゲンを加えます。

すると、細胞内にあるエストロゲンの受容体(エストロゲンだけにぴったりとはまる決まった受け皿=レセプターがあり、それとくっつかなければエストロゲンは働きはじめることができない)につぎつぎにくっつき、それが刺激になってがん細胞が増殖します。乳がん細胞は、エストロゲンの過剰な働きによって増殖していくことがわかります。

そこで、この試験管にエストロゲンではなく、イソフラボンを入れるとどうなるでしょう。構造が似ているため、イソフラボンはエストロゲンの受容体にはいり込むことができます。イソフラボンに受容体を奪われたスイッチが入らないので、エストロゲンは、乳がんの細胞を刺激することができません。

一方、受容体にはいり込んで、スイッチが入ったイソフラボンが働き出しますが、イソフラボンはエストロゲンと似た作用をするといっても、さきほども述べたようにその作用は非常に弱く、しかもゆっくりと働きだすので、結果的にエストロゲンの過剰な働きは、ブロックされることになります。 エストロゲンの分泌が多くても少なくても、イソフラボンはそれを調節してくれる、というわけです。

大豆を食べている地域の女性
脳卒中ラットにイソフラボン入りのエサを与え、その影響を観察しようと計画しました。 イソフラボン入りのエサを与えられた脳卒中ラットのようすはどうなったのでしょうか。 このときは、女性ホルモンの作用とイソフラボンとの関連を調べるということで、卵巣を除去したラットで実験を行いました。

ラットは卵巣を取り除くと、すぐ更年期になります。急に脳卒中が増え、骨からカルシウムが溶け出します。毛もばさばさになって、皮膚のつやがなくなり、肥えてきます。まさに人間の女性の更年期と同じです。

その脳卒中・更年期ラットに大豆の胚芽を混ぜたエサを与えたところ、みるみるうちにそれらの症状がおさまりました。いうなれば若返ったわけです。脳卒中の発生が抑えられただけでなく、肥満もなくなり、毛づやもよくなりました。骨量の減少も抑えられ、骨粗しょう症の発生もゆるやかなものになりました。

日本の女性が若々しいのは世界でも定評があり、日本や中国の女性は肌がしっとりときれいな感じがします。イタリアなどの女性も若いときはきれいですが、更年期を迎えると、肌の状態は大きく変わってしまいます。ホルモンの分泌が変わると、それまでの肌のうるおいがなくなり、太りはじめ、まるで別人のようになってしまう女性も少なくありません。

大豆を食べている地域の女性たちは、やはり閉経以降でも血圧やコレステロールの上昇がみられないということが確認できました。 大豆のイソフラボンが、更年期の女性の健康を守り、そのイソフラボンの働きが、謎であった日本や中国の女性たちの若々しさの理由だったのです。

4.加工品を利用して毎食あるいは最低2食は大豆をとりたい
イソフラボンの吸収のしくみを考えると、3回の食事で分けてとるのが理想的です。 1日の必要量を一度にとっても、イソフラボンはずっと体のなかに残っているわけではありません。体のなかに入ってから、徐々に量が減っていき約8時間で半分に減ってしまいます。そこで、食事ごとになにか大豆食品を取り入れて、イソフラボンを摂取すれば、ちょうど量が減ってきたときに補うことができ、一定の量を保ちながら、効果を持続させることができるのです。

大豆そのものだけでとるのはたいへんですから、加工品をおおいに利用しましょう。 納豆、豆腐、豆乳をはじめ、みそ、しょうゆなどの調味料も含めて、厚揚げ、油揚げ、ゆば、きなこなど、大豆は加工品が多いのでバラエティに富んだかたちで食事に取り入れることができるはずです。

きなこはヨーグルトのトッピングとして利用したり、自分でパンを焼く人などは、生地にまぜ込むこともできます。液体の豆乳は、そのまま飲むのは青臭さが気になるのであれば、マヨネーズをのばすのに使ったり、シチューやスープ、ホワイトソースやグラタン、あるいはホットケーキやクッキーなどに使う牛乳を半量にしてその分豆乳を加えると、カスピ海豆乳ヨーグルトで紹介したような効果が期待できます。

また大豆の一種である黒大豆は、ふつうの大豆(黄大豆)にくらべて抗酸化物質の アントシアニンが豊富に含まれています。アントシアニンは黒い皮の部分に多く、黒のパワーが最近注目されるゆえんです。黒大豆に含まれるアントシアニンは、人間の脂肪細胞がふくらむのを抑えたり、肥満に関係するレプチンというホルモンの働きを正常化するなど、いろいろな効果が報告されています。


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