1.活性酸素を抑制し成人病や老化防止に効く
大豆を加工しているとき、洗った水などが泡立ちます。これは大豆に含まれるサポニンが強い界面活性作用を持っているためです。
この大豆サポニンは豆腐にも含まれており、健康にもいいということで、いま新たに注目されている成分なのです。
大豆サポニンは配糖体といわれる物質で、食感としてのどに残る不快感、つまり渋味、苦味、えぐ味の原因物質でもあります。そのため、豆腐の製造に嫌われた面もありましたが、最近では、からだに及ぼすいろいろな機能が研究されています。
機能としては、脂肪の蓄積を防いだり、老化のもとになる脂肪酸の酸化防止、活性酸素の作用を抑制する、腸を刺激し便通をよくするなどの効果があります。また血栓を予防するなど、成人病や老化防止に関係する効果がさまざま報告されているのです。
中でも肝臓と血液中のコレステロールを低下させる働きは古くから明らかにされているものであり、サポニンの強い界面活性作用がその機能を助けているといわれています。
豆腐には不飽和脂肪酸の一種であるリノール酸が含まれており、コレステロールを下げる働きがあります。リノール酸と、この大豆サポニンの作用が示す通り、豆腐はコレステロールを低下させる食品といっても過言ではありません。
また過酸化脂質が体内に蓄積されると、動脈硬化をはじめとした老化現象などの原因になることが知られていますが、サポニンはリノール酸の酸化を防ぐ作用があります。活性酸素は細胞をサビつかせ、老化を促進させるものですが、活性酸素の抑制にも一役かっているのです。
こうした面だけでも、豆腐は成人病や老化を防止するのに役立つ食べ物であることが分かります。
大豆サポニンが豆腐へ移行することは、豆腐を食べたときにわずかに残るえぐい味が表しています。
なお、サポニンの発ガン抑制効果、エイズ発症抑制効果なども報告されており、今後の研究が期待されています。
脂肪はエネルギー源としてからだに不可欠なものですが、とくに豆腐がすぐれているのは、牛肉や豚肉、鶏肉などとはちがい動物性脂肪をともなわないことです。
タンパク質を多く含む肉類は栄養価が高い反面、コレステロールを増加させる原因になりやすい飽和脂肪が含まれているため、動脈硬化を促進して脳出血や心筋梗塞などの要因になったりします。
これに対して、豆腐の脂肪は植物性のため、コレステロールを含まないばかりか、コレステロールを減らす不飽和脂肪酸を多く含んでいるので、動脈硬化や高血圧の予防にも効果があります。不飽和脂肪酸はこの働きだけでなく、細胞膜や組織の形成、ホルモンの合成や調節、神経や記憶への作用など、生理機能在維持する働きもしているのです。
豆腐が成人病の予防に効果があるとされ、「機能性食品」として注目されているのは、脂肪の中にこの不飽和脂肪酸が含有されているからです。
さらに、不飽和脂肪酸の代表であるリノール酸とリノレン酸も多量に含まれています。これらはからだの中で構成できないため、毎日の食事の中でとらなくてはいけない必須脂肪酸でもあります。
豆腐の脂質にはこの不飽和脂肪酸が8割以上もあり、うち必須脂肪酸であるリノール酸は5割強、リノレン酸は1割弱という高い比率を占めています。リノール酸はからだの中で大切な役割を果しているもので、これが欠乏すると、成長が阻害されたり、皮膚や腎臓の障害を起こしたりします。また、リノレン酸が欠乏すると脳や血液の流れに支障をきたすといわれています。
やわらかい豆腐の力はあなどれないのです。