納豆を代表する糸引き納豆は日本独自のもの?

目次

1.そもそも納豆とは何か?

納豆とは何か、煮た大豆を納豆菌によって発酵させたものを単に納豆といいますが、「納」は納めるの意で、藁荀に「納めた豆」から納豆の名が由来したといいます。
日本には、納豆といえば二つのタイプがあり、原料を大豆にするところは同じですが、製法や発酵微生物が互いにまったく異なりますから、いちがいに両者を納豆仲間として論じることは無理かもしれません。

しかし、本題の趣旨とするところは臭みと味であり、その点からいうとたいへん似通ったもの同士なので、ここでは併論することにしました。その二者とは、一方が寺納豆と呼ばれる「塩辛納豆」、他方が日常ご飯にかけて食べる、あの「糸引き納豆」です。

糸引き納豆は、寺納豆とはまったく製法の異なる食べ物です。大豆を煮て、これを稲藁の包に詰めて保温すると、藁の中に棲息していた納豆菌が大豆の上で猛烈に繁殖し、あの特有の臭さを持ったネバネバの発酵食品ができます。寺納豆が麹カビを主体としてつくるのに対し、糸引き納豆は細菌である納豆菌を使うところが最大の違いで、今から1000年も前の知恵の発酵物です。

今日では藁に包むことは少なく、培養した納豆菌を添加して大規模につくられているのが現状です。納豆は原料の大豆に比べてビタミンB2が7倍も多く、ほかにビタミンB1やビタミンB6、ニコチン酸などの微量栄養素をも多く含み、豊富なタンパク質とともにその栄養バランスは理想のものとなっています。
また、煮ただけの大豆に比べて納豆のほうがはるかに消化吸収は速やかで、粗食であった日本人には格好の滋養食品となり、多くの日本人から絶大なる愛され方をしてきました。

糸引き納豆が日本人の食事にピッタリと合致したいま一つの大きな理由は、日本人の食態とじつによく符合したからです。
日本人は主食の米をそのまま粒の形で炊いて食べる粒食型民族であるのに対し、西欧のように麦を粉にしてから焼いて食べる民族は粉食型民族といいます。この食態系からいくと納豆は完全なる粒食型食品であり、粒食型民族日本人のつくった傑作の一つだといえます。その粒食型民族の主食である米に、やはり粒食の副食物である納豆をかけて食べるのですから、そこにはなんらの抵抗もなく、理にかなった食味が味わえるわけです。

そのうえ「早飯食い」の日本人には、この取り合わせはまことにうってつけでありまして、ご飯に納豆をかけて食べるとき、ネバネバのためによく噛まずに飲み込んでも、そう心配はありません。糸引き納豆にはタンパク質やデンプンを分解する消化系酵素が豊富に含まれていますから、好都合にできているのです。

糸引き納豆については『精進魚類物語』に、納豆太郎糸重という武士が登場して活躍したり、江戸時代に入ると、町に納豆売り屋が朝早くから掛け声を高めて売り歩くなど、その誕生から今日まで、つねに庶民の大切な味として君臨してきました。
納豆の誕生とともに、わが国の朝食には「味噌汁と納豆」という、大豆の二大発酵食品が一つのパターンとして出来上がりましたが、これは栄養学上、大豆の高度な利用という点で外国の研究者からも賞賛された食生活の知恵でした。



2.糸引き納豆はどこから来たのか
中国では油で揚げていた
納豆は日本人の大好物で、最近ではこれまで納豆をあまり食べる習慣のなかった近畿、中国、四国、九州地方でもどんどん需要が伸びています。
これまで口にしなかった人たちが、からだにいいからといった健康指向や美味しいものだという新聞やテレビなどのマスメディアに誘われておそるおそる食べてみたらば「おいしい」ってことになって広まっているのでしょう。

スーパーマーケットやコンビニエンスストアが町の至るところに出現し、納豆をおくようになったのも普及している要因のひとつでしょう。
歴史と伝統のあるわが国の納豆は、独自のものなのでしょうか、それとも海外にも納豆はあるのでしょうか。

結論から申しますと、糸引き納豆は日本以外にもあります。大豆を持ち、その上、稲作をしている民族に色濃く残っていますので、当然それはアジア地域、とりわけ東アジアと東南アジアということになります。まれにアメリカや西欧の大きな都市に主として滞在する日本人向けに売られている納豆は、これは最近になって日本人が持ち込んだものですから、そのような納豆はここではとり上げません。

要するに、昔からそれぞれの民族によって固有につくられた歴史と伝統のある納豆について述べることにいたしましょう。
まず隣国中国です。東アジアに位置するこの国には、大豆の発酵食品として豆腐、味噌、醤油などのほかに日本と同じような糸引き納豆が存在しています。中国は非常に大きな国ですから、北の方や西の方の麦作地帯、牧草地帯ではまったく納豆などつくっておらず、その存在すら知りません。主としてつくっているのは河南(黄河流域以南)地方からで、とくに雲南省のプーラン族やタイ族、広西壮族自治区のチュワン族の間では広く食してきました。

それらの納豆は日本のものとそう違いはありませんでした。
納豆の脇に「豆鼓」と書いてありましたのでそういう名のものなのでしょう。
中国では納豆の食べ方は日本と異なっておりまして、多くの場合は油で揚げて食べます。


3.糸引き納豆は日本独自のもの
今日、日本の納豆については中国から伝来してきた、という説が定説となっていますが、これは正しいのでしょうか。糸を引かない塩辛納豆(寺納豆、浜納豆、大徳寺納豆の類)は、奈良時代から宮内省大膳職でつくられていた「政」の一種で、中国から伝来してきたという記述は平安時代の書物にも見えますので、その通りだと思います。だからといって糸引き納豆もそうであるのか否かはまだ正式には解決されていない大きな問題なのであります。

大陸から糸引き納豆が伝来しなくても、日本で独自に発生しえたものだと考えています。それは、日本の醸造の歴史とその技術方法から考えれば明らかなことなのであります。その根拠は、日本の醤油や味噌づくりが奈良時代からあって、「穀醤」や「未醤」(味噌の原形)として確立していたことが重要なこととして背景にあるのです。


4.糸引き納豆の栄養価は凄い
「畑の牛肉」の証明
「納豆はからだにいいんだ」、「何がなくともまず納豆よ。納豆は栄養あるんだから」などという納豆礼讃、絶讃の言葉をよく聞きます。本当に納豆はそんなに滋養のある食品なのでしょうか。
そうなんです。じつは言われている通りなんです。

まずエネルギー量(カロリー)は糸引き納豆で200キロカロリーで、茹でた大豆180キロカロリーより多く、同じ大豆加工食品の豆腐に比べると約2倍、味噌とほぼ同等であります。タンパク質が100g中16から17g あり、他に10g が脂質と糖質です。約60%は水分ですのでタンパク質の占める割合は非常に大きいことがわかりますが、このことは、納豆を飯にかけて食べ、肉をあまり摂取してこなかったデンプン質主体の日本人にとっては意義の大きいことであったのです。

たとえば牛肉の場合、和牛で18~20%のタンパク質を含みますが、これに比べて納豆はそう遜色のないものなのです。「大豆は畑の牛肉」とよくいわれますが、まったくその通りなのです。その上、牛肉には脂肪が多くあるのでカロリーのとり過ぎに注意が必要だとか、コンステロールが多いので注意しなさい、などととかくいわれるのですが、その点、納豆は大丈夫なのであります。

脂質は2分の1から3分の1、コンステロールはほとんどありません。
また納豆はタンパク質が多いので、それにともなって遊離アミノ酸も群を抜くほど多いのです。
イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトフアン、バリン、ヒスチジン、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリンといった代表的なアミノ酸が非常に多く、中でもグルタミン酸は他の多くの食品に比べて特異的な多さを示しています。

このアミノ酸はご承知のように「うま味」の本体のひとつでもありますので、納豆がうまいわけです。
納豆の栄養で特筆すべきものは、他に無機質があげられます。納豆100g中カルシウム90mg、リン190mg、鉄3.3mg、ナトリウム2g、カリウム660mg、マグネシウム100mg、亜鉛1900mg、銅610mgといった具合なのです。このミネラルの中でとくに注目されますのは亜鉛であります。
このところ日本人の亜鉛不足が話題になっておりますが、じつはこのミネラルが不足いたしますと本当に恐いことになるのです。



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