目次

1.大豆は畑の肉といわれる良質のたんぱく質源

最近では、大豆自体を家庭で調理することは少なくなっているようですが、豆腐や納豆といった大豆加工品は、あいかわらず日本の食卓に欠かせない食品といえるでしょう。

大豆が健康食といわれる理由のひとつに、ひじょうに良質のたんぱく質源であることがあげられます。大豆には100g中に35g程度のたんぱく質が含まれおり、昔から「畑の肉」「山のマグロ」などと呼ばれ、豚や牛などの肉類を食べることが少なかったかつての日本、とくに魚介類が手に入りにくい地域の、貴重なたんぱく質源だったのです。

たんぱく質は、糖質(炭水化物)、脂質とならぶ三大栄養素であることはよくご存じと思います。たんぱく質が大切な栄養源であるというのは、人間はたんぱく質でできているといっていいほど、体を作る重要な材料だからです。

私たちの筋肉や内臓をはじめ、酵素、抗体、ホルモンなど、生きていくうえで必要な物質はほとんどが、たんぱく質から作られています。これらの細胞や組織は、日々壊され、また新しく作られるという「新陳代謝」を繰り返していますから、材料であるたんぱく質を食事でつねに補給しなくてはなりません。

たんぱく質は、牛、豚、鶏、魚などの動物に多く含まれていますが、大豆のほかコメやトウモロコシなどの穀類、落花生など他の豆類などの植物にもかなり含まれています。しかし植物性のなかでも、とくに大豆が「良質の」と前置きつきでいわれるのは、含まれるたんぱく質の量がたいへん多いうえに、栄養的にもひじょうにすぐれているためです。では、同じたんぱく質なのに、栄養価が高いものと低いものがあるとは、どういうことなのでしょう。

たんぱく質は、アミノ酸という物質で構成されていて、肉や魚、豆などのたんぱく質をとると体内でアミノ酸に分解され、その後、体の各組織で必要とするたんぱく質に再合成されています。

じつはこのアミノ酸、なかでもとくに「必須アミノ酸」がいかにまんべんなく含まれているかが、たんぱく質の栄養的な価値を決定しているのです。 アミノ酸は、全部で約20種類あり、その組み合わせによって、さまざまな種類のたんぱく質が作られます。

20種類のうち、多くは体内で合成することもできますが、合成できないか合成が困難なため、どうしても食品として外部からとらなくてはならないものが8種類あります。それを「必須アミノ酸」と呼んでいます。必須アミノ酸が不足すると、発育や健康を害することもあるので「不可欠アミノ酸」といわれることもあります。

一般に植物性たんぱく質には、とくに「リジン」という種類の必須アミノ酸が少ないため、肉類や牛乳などに比較し、たんぱく質源としての栄養的価値は劣るとされています。このリジンは発育にたいへん大きなかかわりをもつアミノ酸で、リジンを含まないたんぱく質を与えられたネズミは、成長することができないという実験結果もあるのです。

しかし大豆は、リジンをはじめとした必須アミノ酸にひじょうに富み、栄養価値は動物性たんぱく質にもヒケをとりません。しかも、動物性たんぱく質源である肉などは食べすぎるとコレステロール過多などが問題になりますが、後に述べるように大豆にはコレステロールを低下させる作用など多くの利点があるため、健康上たいへんすぐれたたんぱく質源といえるのです。

2.大豆のたんぱく質は血液中のコレステロールも減らす

大豆に血液中のコレステロール値を低下させる作用があるのは、リノール酸などの不飽和脂肪酸やレシチンのおかげですが、それだけではなく、大豆のたんぱく質もおおいに関係していることが、最近さまざまな実験によってわかってきました。

「大豆たん白質栄養研究会」での報告では、高コレステロールの患者さんに、大豆のたんぱく質と動物性のたんぱく質を食べてもらって調べたところ、大豆のたんぱく質を食べた場合には、悪玉コレステロールが減り、動物性のたんぱく質を食べた場合と比較し、血液中の総コレステロール値は22%も減少したといいます。また、患者さんの食事を動物性のたんぱく質から大豆のたんぱく質に変えると、血液中のコレステロール値が確実に低下してきたそうです。

これと同様の実験はそのほかにもたくさんあり、その結果を総合すると、大豆のたんぱく質は悪玉コレステロールを減らす働きがあるために、血液中のコレステロール値が下がっていくことがわかってきました。

悪玉コレステロールのそうじ屋、大豆たんぱく質
血管を若々しく保つ働きをもつ成分の一つが大豆たんぱく質です。たんぱく質は、そもそも私たちの筋肉や内臓など体の各部分をつくるために大切な成分です。じょうぶな血管をつくるには、動物性にしても植物性にしても、たんぱく質が欠かせません。 脳卒中の予防には塩分の摂取量が注目されがちですが、それとともにたんぱく質をきちんととるということも非常に重要なのです。

日本では、お年寄りになるとたんぱく質が不足しがちになるので、加齢とともに大豆製品で十分な量のたんぱく質をうまく取り入れる必要があるでしょう。

また大豆のたんぱく質は、こうしたたんぱく質一般の役割だけでなくコレステロール、それも悪玉コレステロール(LDL) の低下にも一役買っているのです。 そのしくみをちょっとご説明しましょう。

私たちが食事からとったコレステロールは、肝臓でつくられる胆汁酸という消化液と十二指腸でくっつき、吸収されやすいかたちになって小腸に送られます。そして小腸の壁から吸収されたコレステロールは、体内で細胞の膜をつくったり、ホルモンの材料になります。

役目を終えたコレステロールは肝臓で代謝され胆汁酸となってまた十二指腸に出てきます。そして腸に送られ便となって体の外に排泄されますが、このとき腸のなかにいつまでもうろうろと残っていると再吸収されてしまい、悪玉コレステロールとなってついには血管などにため込まれることになります。

しかし大豆たんぱく質は、胆汁酸を、腸のなかで捕まえて便にして出してしまいますので、腸から胆汁酸の再吸収も減ります。胆汁酸とくっついていないコレステロールは水に溶けにくく、消化しにくいかたちのままですから、腸での吸収率が下がることになります。

こうして、胆汁酸ともどもコレステロールが便としてどんどん体外に排泄されます。よい具合に、大豆には食物繊維が含まれていますから、便のかさも増え、排泄しやすくなるわけです。

一方、イソフラボンは肝臓の細胞にある悪玉コレステロールの受け皿(受容体)をつくる遺伝子の働きを活発にしてくれます。したがって血液中の悪玉コレステロールが肝臓に取り込まれやすくなり、能率よく処理され、胆汁酸となって腸から排泄されます。

このとき、大豆たんぱく質が腸にあると、先ほど述べたように胆汁酸を体外に出してくれ ます。このようなイソフラボンと大豆たんぱく質の連携プレーの結果、血液中のコレステロール、それも悪玉コレステロールがどんどん減るのです。

3.たんぱく質には塩分を体の外に出す働きもある

たんぱく質は、とくに脳の血管をじょうぶにする働きが重要ですが、もう一つ、食塩を体外に排出するという大事な働きがあります。たんぱく質は体のなかで利用されたあと、尿素という物質になり尿として排泄されます。このときに、尿素は腎臓からナトリウム、つまり食塩を追いだすのです。私たちが行った脳卒中ラットでの実験をもう一度おさらいしてみましょう。

脳卒中ラットに、1%の食塩水を与えると、つぎつぎと脳卒中を起こして、生後100日までに全滅してしまいます。ところが、1%の食塩水を与えていても、大豆たんぱく質を20%含むエサをいっしょに食べさせると、脳卒中を起こしにくくなり、寿命が2倍に延びます。食塩水だけだと平均寿命は81日、大豆たんぱく質もいっしょに与えたほうは170日に平均寿命が延びるという結果が得られました。

たんぱく質が分解されてできた尿素によって、食塩が体の外に排泄されるようになると、高血圧の予防に役立ち、寿命にも大きな影響を及ぼすことを明らかに証明しています。日本食のもつ欠点の一つ、食塩の摂取量が多いという点を克服するのには大変重要な意味をもつ結果だと思います。

豚、大豆からたんぱく質を上手にとることのほかに、沖縄の食で注目すべきは塩分摂取量の少なさです。これは、日本のほかの地域とくらべても群を抜き、あるいは世界のほかの長寿地域とくらべても特筆に値するところでしょう。

実際に、これまでの私たちの調査で、日本は8地域を検診で回っていますが、沖縄の1日の塩分摂取量はそのなかでもっとも低く、平均約8gでした。日本人全体の平均が約12gですから、かなり低い数値だということがわかると思います。

ほかの日本食でこれだけ塩分が少ない食事は病院食ぐらいかもしれません。しかし、味気ない病院食と違って、沖縄の食事は塩分の少なさを意識させないほど、おいしくいただけます。そこにも、長い歴史で培われた生活の知恵がおおいに感じられます。

4.大豆たんぱく質はリバウンドなしのダイエット食品

大豆たんぱく質には、太りにくい体をつくる、肥満を予防するといった効果もあります。 そもそも、本当にダイエットするのであれば、つまり健康な状態を保ちながら体重を減らしたいのであれば、たんぱく質をしっかりとることが基本です。

単に食事の全体量を減らすとか、ごはんを食べなければよい、肉や魚を食べなければよい、というのはまちがった考えかたです。その方法でも、最初は少し体重が落ちるかもしれませんが、あるところまでいくと体重はそれ以上落ちなくなり、リバウンドという、いったん落ちた体重が再び容易に増えてしまう現象が起こる場合が少なくありません。

たんぱく質をしっかりとる、ということは、筋肉をつくろうということです。体重を減らすには、体脂肪を燃やさなければならないわけですが、体のなかでもっとも消費エネルギーが大きい組織が筋肉なのです。

肉や魚などのたんぱく質を極端に制限すると、筋肉がつくられませんから、燃える場所がない、つまり、なかなか脂肪が燃えてくれません。ダイエットといいながら、かえって脂肪をため込む太りやすい体になってしまうのです。

ただし、肉、魚を制限する必要はないといいましたが、動物性脂肪には気をつけなければなりません。脂身たっぷりの肉などは動物性脂肪も摂取することになり、当然これは避けるべきです。肉なら脂身を落とす調理をするか、脂身のない部分を選ぶのが賢い方法です。

長寿地域では、みな肉を食べるときにはゆでこぼしたり、上手に脂を抜いて、上質のたんぱく質だけをとるような工夫をしています。これが、肥満だけでなく、高血圧、高コレステロールを防ぐ知恵なのです。

また、同じ脂肪でも肉より魚のほうがいいのは、魚にはDHAなど多価不飽和脂肪 酸が多く心臓病などを予防する働きをするからです。これはサケ、マグロなど日本人がよく食べるなじみの深い魚にとくにたくさん含まれている成分です。

このように、ダイエットをしたいときは、肉より魚を食べるようにしたほうがよいでしょう。 さらに、こうした動物性たんぱく質より、たんぱく質を大豆からとると、脂肪の代謝が促進されて、効率よく脂肪を燃焼させる働きが高いといえます。


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